CSSだけで実現するスクロールアニメーションの新常識!animation-timelineで広がる表現の可能性
この記事では、スクロールイベントをJavaScriptでハンドリングすることなく、CSSだけでリッチなアニメーションを実現するanimation-timelineプロパティについて解説します。Web開発の現場では、ユーザー体験(UX)の向上は常に重要な課題であり、スクロールと連動したアニメーションはその効果的な手法の一つです。しかし、従来のJavaScriptによる実装は、パフォーマンスのボトルネックになりやすく、コード量も増えがちでした。
animation-timelineは、CSSのネイティブ機能としてこれらの課題を解決します。このプロパティを使いこなすことで、よりシンプルで高速なスクロール連動アニメーションが実現でき、開発の効率化とユーザーへのスムーズな体験提供を両立できます。特に、パララックス効果や、要素が画面内に入ったときにフェードインするような演出など、多くの応用シーンでその真価を発揮します。
この記事でわかること
animation-timeline: scroll()とanimation-timeline: view()の基本的な使い方- スクロール連動アニメーションをCSSだけで実装する最小構成
- 実案件で
animation-timelineを導入する際の注意点とトラブルシューティング - デモコードを元に、アニメーションの挙動を自身で確認する方法
スクロール連動アニメーションの最小構成
CSSだけでスクロール連動アニメーションを実現するには、animation-timelineとanimation-name、そしてキーフレームを定義する@keyframesを組み合わせるのが基本です。
animation-timeline: scroll()によるスクロール連動
ここでは、スクロール量に応じて要素が回転する単純な例を扱います。
サンプルコード
main.css
/* アニメーション対象の要素 */
.scrolling-element {
width: 100px;
height: 100px;
background-color: dodgerblue;
/* アニメーション設定 */
animation-name: rotate-on-scroll;
animation-duration: 1s; /* この値はスクロール連動では相対的なものになる */
animation-timeline: scroll(root); /* スクロールタイムラインを設定 */
animation-fill-mode: both; /* アニメーションの最終状態を維持 */
}
/* スクロール方向を示すためのコンテナ */
.container {
height: 200vh; /* 縦方向のスクロール量を確保 */
}
/* キーフレーム定義 */
@keyframes rotate-on-scroll {
from {
transform: rotate(0deg);
}
to {
transform: rotate(360deg);
}
}
index.html
<!DOCTYPE html>
<html lang="ja">
<head>
<meta charset="UTF-8">
<title>スクロール連動アニメーションのデモ</title>
<link rel="stylesheet" href="main.css">
</head>
<body>
<div class="container">
<div class="scrolling-element"></div>
</div>
</body>
</html>
animation-timeline: view()による表示連動
LPやブログ記事でよく見かける「スクロールすると見出しや画像がふわっと登場」という演出も、animation-timeline: view()を使えば簡単に実装できます。
サンプルコード
main.css
/* アニメーション対象の要素 */
.fade-in {
opacity: 0; /* 初期状態は非表示 */
animation-name: fadeInOnView;
animation-timeline: view();
animation-duration: 1s; /* アニメーションが要素の可視範囲全体で再生されるための補助値 */
animation-fill-mode: both;
}
/* キーフレーム定義 */
@keyframes fadeInOnView {
from { opacity: 0; }
to { opacity: 1; }
}
index.html
<div class="container-for-scroll" style="height: 200vh;">
</div>
<div class="fade-in">こんにちは!</div>
ポイント解説: animation-timeline: view()に設定すると、その要素がビューポートに入ったときのみアニメーションが再生されます。animation-durationは、アニメーションが要素の可視範囲全体で再生されるための補助的な値として機能します。
実案件で使う場合の注意点と落とし穴
animation-timelineは非常に強力ですが、実案件で導入する際にはいくつか注意すべき点があります。
ブラウザのサポート状況
2025年9月現在、animation-timelineは主要ブラウザのChromeおよびEdgeのバージョン115以降でサポートされています。Safariはバージョン26(Beta/TP)で対応しており、安定版での実装も進んでいます。Firefoxはデフォルトでは無効化されています。業務導入前には必ずMDNのブラウザ互換性表などで最新状況を確認し、必要に応じてフォールバックを検討してください。
パフォーマンスのメリット
animation-timelineを利用したスクロール駆動アニメーションは、メインスレッドから独立した合成(compositor)スレッドで動作しやすいため、非常に滑らかです。特にtransformやopacityといったプロパティは、再描画のコストが低く、高いパフォーマンスを発揮します。これにより、JavaScriptによる実装に比べて、ユーザー体験を損なうことなくリッチな演出が可能です。
トラブル時のチェックポイント
animation一括指定はanimation-timelineをリセットするanimationの一括指定プロパティは、animation-timelineをリセットするため、animationを書いた後にanimation-timelineを書くようにしてください。初学者が遭遇しやすい「アニメーションが効かない」トラブルの多くが、この記述順序に起因しています。アニメーションが動かない、または途中で止まる
スクロールコンテナの指定が正しいか確認してください。
animation-timeline: scroll(root);は<html>要素、scroll(self);はanimation-timelineが設定されている要素自体を指します。スクロール領域が十分に存在するか確認してください。
view()を利用する場合でも、ページ全体にスクロールバーがないとタイムラインが非アクティブになり、アニメーションが動作しません。animation-durationは非0の値か? Firefoxでは、animation-durationに非0の値(例:1ms)が設定されていないとアニメーションが動作しません。クロスブラウザ対応を意識するなら、1msなど極小値を設定しておくと安全です。
SPA(シングルページアプリケーション)での挙動に注意してください。 JSで動的に要素を追加・削除する場合、ブラウザの再評価が追いつかないことがあります。
MutationObserverなどでDOMの変更を検知し、アニメーションを再評価する処理を実装する必要があるケースも存在します。
まとめ
animation-timelineは、Web開発におけるスクロール連動アニメーションの新しいスタンダードになりつつあります。JavaScriptを使用せず、CSSだけで直感的かつパフォーマンスの高いアニメーションを実装できるこのプロパティは、表現の幅を大きく広げてくれます。特に、scroll()とview()という2つのタイムラインを使い分けることで、多様な演出が可能です。
この記事が、animation-timelineの理解を深める一助となれば幸いです。ご覧いただきありがとうございました。







