by MintJams

もう後悔しない!サードパーティCookieなき時代の実装戦略:CHIPSとRWS、代替手法を徹底解剖

【Web開発者向け】サードパーティCookieなき時代を生き抜く実装ガイド。CHIPSとRWSの具体的な設定例から、サーバーサイド計測やファーストパーティデータ活用といった現実的な代替案まで、実務に役立つノウハウを解説します。

サードパーティCookieの段階的廃止は、ウェブ開発者にとって避けられない現実となりました。Chromeの動向に注目が集まるなか、多くの企業がユーザー追跡や広告ターゲティングの代替手段を模索しています。しかし、本当にすべてのCookieが使えなくなったのでしょうか?実は、プライバシーに配慮しつつも、限定的な用途で利用できる新しい仕組みや、Cookieに依存しない現実的な代替手段が存在します。この記事では、サードパーティCookieの「完全撤廃後」を見据え、何が変わったのか、そして残された道筋について、具体的な実装戦略と共に解説します。


この記事でわかること

  • サードパーティCookieの現状と今後の展望
  • プライバシー保護と利便性を両立する新しいAPI(CHIPS、RWS)の活用法と限界
  • Cookieに頼らない現実的なデータ計測・連携方法
  • 実装時に避けるべき「アンチパターン」

CHIPSとRWS:進化するCookieの世界

かつてサードパーティCookieが担っていた役割の一部は、プライバシーサンドボックスの新しい技術によって引き継がれています。特に重要なのが、CHIPS(Cookies Having Independent Partitioned State) と、旧称であるFPS(First-Party Sets)から改称されたRWS(Related Website Sets)です。これらの技術は、従来のサードパーティCookieのように無制限なユーザー追跡は許可しないものの、限定されたコンテキスト内でのCookie利用を可能にします。

CHIPS(Partitioned)を活用する

CHIPSは、サードパーティコンテキストでCookieを設定・利用する際に、パーティション化されたストレージを強制する新しい属性です。これにより、クロスサイトトラッキングを防ぎつつ、サードパーティサービス(例えば、埋め込み型のチャットウィジェットや、ユーザー設定を記憶するCDNなど)がセッション状態を維持できるようになります。Partitioned 属性は、Secure 属性とセットで利用する必要があります。

設定例:Set-Cookie ヘッダーでの付与

document.cookie での付与も可能ですが、サーバーサイドからレスポンスヘッダーでSet-Cookie を指定するのが一般的な実装方法です。より堅牢な設定のため、Path 属性や__Host-接頭辞を追加することも推奨されます。

HTTP/1.1 200 OK
Content-Type: text/html
Set-Cookie: __Host-session_id=xyz; Path=/; SameSite=None; Secure; HttpOnly; Partitioned

解説:

  • Partitioned:このCookieがパーティション化されたストレージに保存されることを示します。
  • HttpOnly:JavaScriptからのアクセスを禁止し、クロスサイトスクリプティング(XSS)攻撃によるCookieの盗用を防ぎます。セッション管理に重要なCookieでは、この属性を付与することがベストプラクティスです。
  • ユースケースの例: ログイン状態を維持する埋め込み型のSNSフィード、ユーザーのセッション情報を保持する決済ウィジェットなど。

RWS(旧FPS)でグループ化する

RWSは、同じ組織が運営する複数のドメインを「ファーストパーティの集合体」として定義する仕組みです。このセットに登録されたドメイン間では、Storage Access API(SAA)の許可が自動で付与され、限定的な状況下でCookieにアクセスできるようになります。

RWS登録の現実: RWSは公開のGitHubレジストリにPRで申請し、技術チェックと承認を経て、公開リストに反映されます。申請後すぐに反映されるものではなく、審査基準やタイムラグも考慮する必要があるため、運用負荷も頭に入れておきましょう。

設定例:SameSite属性の挙動

RWS(旧FPS)では同一セット内の埋め込み時にStorage Access APIの許可がプロンプト無しで付与されますが、ユーザー操作とAPI呼び出しは必要です。SameSite=None; Secure のCookieはクロスサイトで送信されます。SameSite=Lax/Strict のCookieはRWSやSAAがあってもクロスサイトでは送られません。必要に応じて document.requestStorageAccess()document.requestStorageAccessFor() を使って、明示的にCookieへのアクセスをリクエストする必要があります。

  • ユースケースの例: 複数のブランドサイトや地域別サイトを運営する企業におけるシングルサインオン(SSO)など。

代替計測の現実解:Cookieに頼らないデータ連携

CHIPSやRWSが解決しない課題、特にクロスサイトのアトリビューション(広告効果計測)やアフィリエイト連携には、Cookieに依存しない代替手段を検討する必要があります。

主要な代替手段と「やらないほうがいい」パターン

代替手段 用途 メリット・デメリット やらないほうがいいパターン
サーバーサイド連携 広告計測、コンバージョン追跡 ✅ プライバシーに配慮、長期的なデータ保持が可能
❌ 導入コストが高い、サーバー間通信が必要
サーバー間で個人情報(PII)を無暗にやり取りする
ファーストパーティデータ 顧客理解、パーソナライゼーション ✅ プライバシーリスクが低い
❌ 自社サイト内でのみ有効、データの範囲が限定される
ファーストパーティデータとサードパーティデータを無理に紐づける

補足:主要な計測ツールの対応 GA4などの主要な計測ツールは、すでにサーバーサイドタグMeasurement ProtocolといったCookieに依存しない計測手法を順次サポートしています。ツールのアップデートに追従し、最新のドキュメントを定期的に確認することが、正確なデータ計測の鍵となります。


現場で役立つワンポイントアドバイス

  • クロスブラウザ検証の重要性: CHIPSやRWSは2025年現在、Chromeを中心とした機能です。本番実装時は必ず各ブラウザ(FirefoxやSafariなど)で挙動を検証し、互換性やフォールバック設計も検討しましょう。
  • 今すぐやるべきこと: サードパーティCookie廃止に備え、まずは自社サービスで使っているCookie・クロスドメイン通信の棚卸しを行い、RWS登録やサーバーサイド計測の導入計画を立てるのがおすすめです。

まとめ

サードパーティCookieの完全撤廃は、トラッキングの時代に終止符を打ち、プライバシー保護を第一に考えるウェブの新しい時代を切り開きます。しかし、これはウェブ開発の終焉を意味するものではありません。CHIPSやRWSといった新しい技術は、限定的ながらも利便性を維持する道を示しています。また、広告計測などの分野では、サーバーサイド連携やファーストパーティデータの活用が、より現実的なソリューションとなります。

未来のウェブ開発は、無制限なデータ収集から、ユーザーの信頼に基づいた、透明性のあるデータ活用へとシフトしていきます。この記事が、皆さんの新しい時代のウェブ開発における一助となれば幸いです。ご覧いただきありがとうございました。


参考資料